魅惑の絶対君主
完敗
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午前9時に目が覚めると相楽さんがもう起きていた。
「まさか、今日も仕事だとは言わないですよね?」
「うん。今週のぶんは昨日片してきたから」
「そうですか、よかったです……。何も予定がないなら、まだベッドに横になってたほうがいいと思いますよ」
「そうだね」
そうだねと言いながらも、会話が終わるとライターと煙草を手にベランダに出ていってしまう。
わたしより先に起きてたけど、見るからに寝起きって感じだし、絶対朝ごはん食べてない。
ベランダで今日も気だるい息を吐き出す相楽さんを横目に、わたしは玄関先へ向かった。
いつも通り、朝の食事が宅配ボックスに入っていた。
ダイニングに移動して、手を合わせる。
今日も彩り満点、バランス満点、栄養満点。
これって今はわたしじゃなく……相楽さんが食べるべきなのでは?
「相楽さん、相楽さん」
ベランダの窓越しに声を掛けると、面倒くさそうに煙草を灰皿に押し付けながら出てきてくれた。