魅惑の絶対君主


玄関を開けた先には、もう見慣れた顔。



「鏑木先輩、お疲れ様です。今日もありがとうございます!」

「あはは、そんなに急いで出てこなくてもよかったのに」


「いえ、お待たせするわけにはいかないので……」

「ところで、話し声が聞こえたけど、今日はお兄さん休みなの? 珍しいね」



“お兄さん”にはいつものことながら違和感を覚えるけど、態度に出すわけにはいかない。



「そうなんです。いつもは仕事なんですけど、ちょっと今、過労で体調を崩してて……」

「えっ、そうなんだ。心配だね……。疲労回復には、タンパク質はもちろんだけどクエン酸を取るのがいいよ」


「なるほど、タンパク質とクエン酸……」

「ちょうど今持ってきた料理に、タンパク質豊富な鶏肉も、クエン豊富なグレープフルーツも入ってるんだ。よかったら参考までに」


「そうなんですね。ありがとございます
、助かります!」



こんなに親切に教えてくれるなんて、さすが昔から続く料亭の息子さんなだけある。

< 172 / 245 >

この作品をシェア

pagetop