魅惑の絶対君主

今日はバイトが休みだから、お母さんと夜ご飯を食べる約束をしていた。


スーパーのタイムセールで買ったひき肉パックを、お母さんが帰ってきたとき一緒に食べようと思って冷凍庫に入れておいたんだ。


ハンバーグを食べるのはいつぶりだっけ。

美味しく作れるといいなあ……。


考えるだけでお腹がすいてくる。


昨日あんなことがあったのに能天気すぎるって、レオくんなら言いそうだな。

想像して、ひとりで苦笑いをした。


だって、悪いことばっかり考えても仕方ないもんね。


借金取りさんには昨日お金を渡したし、しばらくは来ない……よね?


ふと、昨日の光景が蘇る。


三人の中で、ひとり異質な雰囲気を放っていた彼──。

思い出すだけで背筋が冷えた。



『その女まだ若いし、金になる体を傷つけんのは得策じゃないです』

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