魅惑の絶対君主
あの人──相楽さんは、他の二人より若かったし、二人みたいにガラが悪くもなかった。
スーツを上品に着こなしてたし、口調もゆったりめで、ついでにお顔もかなり整ってて……。
むしろ、いいとこのお兄さん、って感じの人だった。
じゃあ、どこで、なにをもって“怖い”と感じたんだろう。
目つき?
声色?
仕草?
どこかしら不穏な雰囲気が漂ってたんだよね……。
そんなことを考えながら電車に揺られていると、危うく乗り過ごしてしまいそうになった。
『扉が閉まります。ご注意ください』
アナウンスと同時に慌てて飛び降りる。
切り替えてハンバーグのことを考えようとするのに、脳裏に焼きついてなかなか消えてくれない。
初めて見る顔だったし、昨日はたまたま二人組に付き添ってただけだよね。
今後会うことはないよね、きっと。
そう結論づけて、今度こそ彼を頭の外に追いやった。
───だから、アパートにたどり着いて、その姿を視界に捉えたとき。
「………へぁ?」
なんとも素っ頓狂な声が出たんだ。