魅惑の絶対君主

あの人──相楽さんは、他の二人より若かったし、二人みたいにガラが悪くもなかった。


スーツを上品に着こなしてたし、口調もゆったりめで、ついでにお顔もかなり整ってて……。

むしろ、いいとこのお兄さん、って感じの人だった。



じゃあ、どこで、なにをもって“怖い”と感じたんだろう。

目つき?
声色?
仕草?

どこかしら不穏な雰囲気が漂ってたんだよね……。


そんなことを考えながら電車に揺られていると、危うく乗り過ごしてしまいそうになった。



『扉が閉まります。ご注意ください』


アナウンスと同時に慌てて飛び降りる。



切り替えてハンバーグのことを考えようとするのに、脳裏に焼きついてなかなか消えてくれない。


初めて見る顔だったし、昨日はたまたま二人組に付き添ってただけだよね。

今後会うことはないよね、きっと。


そう結論づけて、今度こそ彼を頭の外に追いやった。



───だから、アパートにたどり着いて、その姿を視界に捉えたとき。


「………へぁ?」


なんとも素っ頓狂な声が出たんだ。

< 21 / 245 >

この作品をシェア

pagetop