魅惑の絶対君主
「誰それ」
「え? ……今日、相楽さんにインスタのid書いた紙を渡してた、可愛い子です」
「あー、あの女……。とっくに捨てた。お前ね、わざわざそんなこと聞くために起こしたの」
「えぅ、すみません……。ずっと気になって、なんか眠れそうになくて」
「へえ、嫉妬しちゃったか」
くすっと笑う気配。
また心臓が大げさに反応する。
嫉妬って……やきもちのこと?
「……そうなの、かなあ……?」
月明かりがカーテンの隙間から漏れて、だんだんと物の輪郭を捉えられるようになってきた。
「お前、ほんとに可愛いね」
そんな中で、相楽さんと視線が絡んだのがわかり。
また、ドクリと心臓が跳ねる。
指先がわたしの頬を撫でると、
引き寄せられるように……唇が重なった。
「……──」
丁寧にかたちを捉え、静かに離れていく。
ただ一度きりのキスの感覚は、優しさだけを残して夜に溶けていった。