魅惑の絶対君主
「立派に成長したよなあ。お前を“商品”にしなくてよかったよ。俺の目は間違ってなかった」
「その話はもう聞き飽きました。御用がなければ俺は仕事に戻ります」
「まあ、待て相楽。今日はお前に大事な話を持ってきたんだ」
急に声のトーンが落ちた。
この人、まだこういう声を出せたのか。
感心する一方で、嫌な予感が頭をよぎる。
「今までお前が担当した女は質が良いと、今、界隈でそれはそれは評判になっているんだよ」
「もともと質のいい女を俺に担当させていただけでしょう。俺は何もしてません」
「まあそう謙遜せずに。お前以外の男は、売られる女を匿うと好き勝手性のはけ口として使ってボロボロにしちまうが、お前は基本放置でテキトーにメンタルケアするくらいだから、女が綺麗なままで仕上がりがいいんだよ」
吐き出された煙が、次第に嫌な臭いを纏い始めた。
「それを受けて、ウチの特別なお客様が“ぜひ相楽の担当の女を買いたい”とおっしゃったんだ。オークションではなく、直々に」
「……そうですか」
そのセリフを冷静に噛み砕いて、とりあえず返事をする。
脈が少しずつ速まるのを感じた。