魅惑の絶対君主


聞いたことのないレオくんの怒号が教室に響いた。

びりびりと鼓膜を揺さぶられる。


レオくんは少し息を乱していた。



「急に怒鳴ってごめん。でも……冬亜ちゃんの好きって気持ちは絶対に“勘違い”だから、それだけはわかって……」


「勘違い……? なんでレオくんがそんなことわかるの?」


「わかるよ。ストックホルム症候群の事例とまったく同じだから」


「すと……る、む……症候群……?」



わからない単語に首を傾げることしかできない。



「“ストックホルム症候群”。監禁されたり人質にされた被害者が、加害者に対して愛情を感じてしまう、精神的なストレス障害のことだよ」

「……え?」


「本当は憎むべき相手でも、長時間一緒に過ごしてるうちに“自分は相手に好意を持ってる”って脳が勘違いを起こすんだ。精神科学でも証明されてるから、調べてみて」



静かにそう告げて、レオくんは去っていった。


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