魅惑の絶対君主
「──冬亜」
名前を呼ばれてハッと顔を上げた。
「夕飯手つけてないじゃん。どうしたの」
わたしが座っているソファの手前に屈み込んで、顔をのぞき込んでくる。
その瞳も優しい。
「また俺と一緒に食べようか」
その声も優しい。
「……冬亜? ……なんで泣いてんの」
涙を拭う指先も。
そこから伝わる体温さえ……この人は全部優しい。
その優しさに、どうしようもなく胸が熱くなって。
どうして、一瞬でも疑ってしまったんだろう。
こんなに胸が熱くなるほどの気持ちが、“勘違い”なはず、ないのに……。
「相楽さん」
「うん?」
「……好きです」
涙と一緒に、ぽろっと零れ落ちた。
「ごめんなさい、わたしは商品なのに……、好きになって、ごめんなさい……っ」