魅惑の絶対君主

ここまで聞けば、いくら頭が悪くても相楽さんの言いたいことはわかってしまう。



つまり、逃げろってこと……?



「いきなりどうしてですか? わたしが逃げたら、相楽さんの首が飛ぶんでしょ……?」


「急遽、オークションを待たずに冬亜が買い取られるって聞かされた。引き取りは今日の昼」


「え……、きょ、う?」


「そう。俺はまだ冬亜の体ぜんぜん仕込めてないし。金にならなかったら困るから、とりあえず逃げて時間稼いできて」



パニックになるわたしをよそに、相楽さんはあくまで淡々としていた。



「あんまり時間がないんだよ。そこのほぼ空っぽのスクバと制服持ってすぐ出ていって」


「えっ……で、も……」


「大丈夫、すぐ迎えに行く。俺は冬亜を誰よりも高値で売れる状態にしてから競売に出すって決めてるんだよ。……ほら、急いで」



そんな言い方をされると、まだ話が完全に呑み込めていないのに、急ぐしかなくなってしまう。


< 229 / 245 >

この作品をシェア

pagetop