魅惑の絶対君主
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「はぁっ、……はぁっ……」


懐かしい駅の改札を降りて、記憶を辿りながらその道を走った。



相楽さんに会えなくなってから、何度も何度も足を運ぼうとしていた場所。


でもそのたびに足が竦んで辿り着けなかった場所。



今日は日曜日。

日曜日が相楽さんの固定休だった。


マンションまでの道、部屋の番号も覚えてる。



迎えに来てくれなかったから、会いにいくのが怖かった。


でも今日は……次に進むために、自分でけじめをつけるために


“お別れ”を言いに来た。


だから大丈夫。

会いに行ける。



繁華街の裏の通りに出るとそのマンションが見えた。


もう、少し……。

鼓動が激しくなってくる。


赤信号を待つ時間も惜しい。


すぐ近くの繁華街と裏腹に、ここはまったくと言っていいほどひと気がない。


もう渡ってしまおうかな、と思いながらもきちんと待って。

信号が青に変わった瞬間、足を踏み出した

──────はず、だった。



「鈴木冬亜……やっと捕まえたぞ」



そんな声が聞こえたと同時、視界が反転する。

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