魅惑の絶対君主


わたしを抱きしめていたはずの体が、崩れていく……。


その動きが、やけにスローモーションで流れた。



……─────



「さがら……さん……?」



地面に力なく横たわる体。



赤いシミがみるみるうちに広がって……

いつの間にか、わたしの足元にまで及んでいた。



「さがらさん………返事し、て……」


自分の声が、どこか遠くで聞こえる。



ひどい目眩がする。

頭が割れるように痛い。



銃声を聞きつけたのか、だんだんと周りに人が集まってくる。


誰かが救急車を呼んでいる。


わたしの背中を、誰かがさすって、なにか必死に声を掛けている……。



答えなくちゃと思うのに、わたしはただ荒い呼吸を繰り返すだけ。





やがて聞こえてきたサイレンの中で、わたしは両手で祈るように相楽さんの手を握った。




< 239 / 245 >

この作品をシェア

pagetop