魅惑の絶対君主
わたしを抱きしめていたはずの体が、崩れていく……。
その動きが、やけにスローモーションで流れた。
……─────
「さがら……さん……?」
地面に力なく横たわる体。
赤いシミがみるみるうちに広がって……
いつの間にか、わたしの足元にまで及んでいた。
「さがらさん………返事し、て……」
自分の声が、どこか遠くで聞こえる。
ひどい目眩がする。
頭が割れるように痛い。
銃声を聞きつけたのか、だんだんと周りに人が集まってくる。
誰かが救急車を呼んでいる。
わたしの背中を、誰かがさすって、なにか必死に声を掛けている……。
答えなくちゃと思うのに、わたしはただ荒い呼吸を繰り返すだけ。
やがて聞こえてきたサイレンの中で、わたしは両手で祈るように相楽さんの手を握った。