魅惑の絶対君主


当然、すぐに話を理解できるわけもなく立ち尽くす。


えっと……今なんて?

ゾウキウル?
カラダゴトウル?


脳内で漢字に変換して、やっと、意味だけは理解できたけど……どうしていきなりそんな話になるんだろう。



「えっと……お金は、毎月八万ずつ返済しますので、必ず」

「もうそんな悠長なこと言ってられなくなったんだよね、お前の母親がお前を残してトんだせいで」

「は……、……え?」



またしても意味のわからないセリフに思考が息詰まる。


そんなわたしを見て、彼は少し面倒くさそうな顔をした。



「今朝、お前の母親からウチの担当にメールがきた。それがこれ」



そうして突きつけられたスマホ画面。

並ぶ文字を順番に目で追う。


至ってシンプルな一文だった。

だけど、最初の文字から最後の文字まで、何度も何度も行き来せずにはいられなかった。



『返済金代わりに娘を差し出します』



──“読み間違い”である可能性を、必死に探そうとして。

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