魅惑の絶対君主
俺は12歳まで、とある富豪夫妻の養子として育てられていた。
元は夫と愛人のとの間にできた子供だったが、正妻が子どもを産めない体ということで、俺を養子として引きとったらしい。
勉強はもたろん、あらゆる分野の教養や礼儀作法を厳しく身に着けさせられた。
ところが、ある日子どもを産めないと言われていた正妻の妊娠が発覚し、俺は用済みになった。
捨てられた先で、冬亜と同様オークションに出される予定だったのが
主催者側の役員に気に入られた流れで、そこで働くこととなり、今に至る。
つまらなくて、くだらない人生。
死にたいとも思わない代わりに、生きたいとも思わない。
『死ね』と命令されるのなら、躊躇わずに死んでみせよう。
それくらい従順に──────自分の意志なく生きてきた。