魅惑の絶対君主
そうして俯きかけたのを、またしてもキスで遮られた。
再び重なった唇に、いよいよパニックになる。
「~っ、や、なんでっ」
思わず腰を引けば、
「好きだよ」
と、なんでもないことのようにそう言われて。
「――、え?」
わたしはしばらく、時間という概念を失った。
「す……き? 相楽さんが、わたしを……?」
「そうだね。言ってなかったっけ」
いつもなんにも変わらない淡々とした口調。
嘘をついているとは思えなかった。
じわじわと、だいぶ遅れて胸の奥が熱くなっていく。
「え……それは、いったい、いつから……?」
「さあ」
「さあって……」
果たして本当に信じていいのか、不安になった矢先に。
「でもまあ、冬亜が数学の課題広げて寝てたときとか、料亭の息子から宅配受け取ってたときとか、あのときはもう訓練関係なく押し倒してた気もする」
「……っ」
さりげなく爆弾を落としてくるの、本当にずるい。
「そんなの全然知らなかった、っ、なんで言ってくれなかったんですか⁉」
「はいはい、ごめんて」
「うう……いつもそうやってテキトウだし……ほんとに憎たらしいです……」
「その憎たらしい男に抱き着いてんのは誰なんですかね」
ため息と同時に、背中に優しく腕が回って。
それから、ゆっくりと体重がかかる。
会えなかったぶんの時間を取り戻すように、距離を埋めるように、深くまで求めて、求められて。
「どう? 憎い男に一晩中抱かれる気分は」
「ぜんぜん物足りないです。……もっともっと、憎ませてくれないと」
ふたりで一緒に、甘い甘い夜に落ちた。
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魅惑の絶対君主【完】
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