魅惑の絶対君主


部屋から物がなくなってるのは、売ってお金にするために借金取りさんが盗んだから。

金庫のお金も同様。


お母さんは脅されて、どこかに連れて行かれたんだ。

きっと、そう……。


お母さんはわたしを愛してくれてた。
わたしを捨てるはずない。

信じたい、のに。



ふと、テーブルの上に無造作に置かれたメモ用紙を見つけて屈み込む。

そこには『冬亜ごめんね。』

と書かれていた。



丸っこい癖字は間違いなくお母さんのもの。


いつのまにか涙が頬を伝っていて、空気に触れるたびにそこがヒリヒリ痛くて。

呼吸がままならなくなるほど苦しくて。


これは現実だって、嫌でもわからせてくる。



「延滞料合わせて借金総額3千万。……だいじょーぶ、お前の体なら倍値で売れるよ」

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