魅惑の絶対君主
背後で、煙を吐き出す気配がした。
慰めの言葉ひとつすらないのが、この人のことをよく知らないのに、この人らしいと思ってしまって。
「ちなみに儲けの一割はお前の母親の懐に入るからね。つまり借金完済できてさらに金も貰えて超ハッピー、なわけだ」
相変わらず感情のこもらないその声を聞いていると、不本意ながら少しずつ冷静さを取り戻すことができた。
「わたし……お母さんに、売られたん……ですね」
「そう、お前は売られた。三ヶ月後にウチが主催するオークションに商品として出される」
オークション……。
呆然とする。
なんて現実味のない言葉だろう。
「さっきは二択を迫ったけど、臓器は俺の専門じゃないんで安心しな。どうしても死んで楽になりたいって言うなら、そっちの担当に変えてやるけど」