魅惑の絶対君主
つまり、わたしは“身体ごと”売られるってこと、だよね……。
臓器を売るか身体を売るか。
どっちだっていい。
「お前、男に抱かれたことは?」
「………」
ああ、やっぱり。
身体を売るってそういうことなんだ。
「……まあいーや。泣きやんだならとりあえず荷物まとめな。今日から俺の家に住んでもらう」
もうどうにでもなればいい。
そんな、投げやりな感情に支配されたけど。
──『冬亜だけが頼りだよ〜大好きっ』
お母さんの声が再び頭をよぎって、なんとか思い直した。
きっと、こうせざるを得ない状況にまで追い込まれてたに違いない。
お母さんが助かるなら身体を売るくらいなんてことない。
でもこのまま一生会えないのは嫌だ……っ。
そうだ、今すぐ走ってここから逃げれば……。
一瞬そうも考えたけど、彼を目の前にすると底知れぬ恐怖にあてられて足が竦んでしまう。