魅惑の絶対君主
俯いたまま、気づかれないように視線だけを上に移動する。
わたしを取り囲んでいるのは、カジュアルスーツを上品に着こなした三人の男性。
引っ越す前はいつも二人組だったのに、今日は一人増えてる。
お馴染みの二人組から一歩引いたところに立っている彼は、ちらっと見た限り若そうで、恐らく新顔さん。
廊下の柵に片肘をついて、一言も発さず気だるげにこちらを眺めている。
まずは見て学べ、って感じで連れてこられたのかもしれない。
それにしてはとてつもなく無関心な印象を受けるけど……。
「つか、債務者本人はどこだよ。 今日こそきちんと返してくれるんだろうな」
手前の男性に距離を詰められ、扉に背中がぶつかった。
早くも逃げ場を失ってしまう。
「……すみません。母は出かけていて、家にいなくて」