魅惑の絶対君主
「む、無理なら全然大丈夫です! 休学でも退学でも……っ」
「あー、うん」
テキトウすぎる相槌を打ったかと思えば、思い出したようにスマホを取り出して操作し始める彼。
なんていうか、すごいマイペース……。
こんな感じなら逃げ切れるんじゃないかって気もしてくる。
判断を早まってはいけないので、大人しく荷物整理を再開したけれど。
「……ま、善処するよ」
彼がそう言ったのは、それから五分以上経ったあとのこと。
それが、さっきの学校に行きたいという要望に対する答えだとわかるまで、しばらくかかった。
「ありがとう、ございます……」
お礼を言うのもヘンだと思いながら、おそるおそる相手に向き直った。
「部屋にずっと閉じ込めて気がおかしくなられても困るからね」
「………」
綺麗なアーモンドアイがすうっと弧を描く。
「お前は“商品”だから、大事にするよ」