魅惑の絶対君主
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それから十分と経たず、わたしは車に乗せられた。


「生活に必要な物はもう揃えてある」と言われ、結局、持ち物は学用品だけ。

課題に必要な教科以外はほとんど置き勉してるから、ひとつのバッグに余裕で収まってしまった。



今日から別の場所に住むとは思えないほど少ない荷物……。


わたし……これからどうなっちゃうんだろう。

オークションで買い取られたあとは、きっと人間らしい生活はできないんだろうな。


胃の辺りが鈍く痛み始める。



……大丈夫。

オークションに出される前に絶対逃げ切って、お母さんに会って、もう一回ちゃんと話し合うんだ。



そのためには、まず彼の信頼を得る必要がある。

油断させて、その隙を狙う。


こういうのは最初が大事だよね。

抵抗心を捨てて、あなたに懐いてますよアピールするのがいいかもしれない。


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