魅惑の絶対君主


そして、こんなときに限って赤信号で停車したりする。



「お前って見かけによらず騒がしいね」



沈黙で体が押しつぶされそうになっている中そんなことを言われ、もはや身が滅ぶ思いだった。



「そうだ。まだ名前聞いてなかった」



次に視線がこちらにスライドしてくる。

従順に……従順に……と自分に言い聞かせる。




「……冬亜です」

「とあ? どういう字書くの」


「冬に……、亜熱帯とかの亜です」

「わかった」



相楽さんの返事と同時、信号が青に変わった。



「じゃあ冬亜、ちょっと寄り道しようか」



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