魅惑の絶対君主

ふと、そんな考えが頭をよぎったタイミングで

「バカな真似はやめときな」

と、のんびりした声に制された。



「………え」

「そんな怯えきった状態なら、どうせ足もまともに動かない」

「……、……」



逃げようかなと声に出したわけてもないし、ドアハンドルに手を掛けたわけでもない。

なんならじっと座ってただけなのに。


見透かされすぎて……怖い。



「逃げた瞬間からお前は逃亡者扱いになるんだよ。逃亡者は見張りがバカみたいに厳しくなるからお勧めしない」


「そ、そうなんですね。逃亡なんて、考えてみたこともなかったです」


「そー。よかった」


隣でくすっと笑う気配がした。



危なかった……っ。

これ以上見張りが厳しくなるなんてたまったもんじゃないよ。


早まってはいけない。

念入りに計画を練るんだ。


従順に、従順に……と、再度自分に言い聞かせる。

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