魅惑の絶対君主
この人、口調は軽いのに響きに重みがある。
殺すとか平気で言うし、それに違わないことを平気でやりそうな冷酷さも感じる。
それでも手のひらは思いのほか温かかった。
少なくとも、わたしよりは。
自動ドアをくぐった先には、またすぐに扉があった。
キルティング仕様の見るからに高級なそれは、近づいた者を無情に跳ね返しそうな圧力を放っている。
手前にいた黒いスーツの男性が、こちらに気づいてにこっと微笑んだ。
「相楽が女連れ……うわ〜珍しい。今日はプライベート?」
「いーえ仕事ですよ」
「ははっ、その“声”は確かに仕事だな」
「お前もちゃんと仕事をしようね。“いらっしゃいませ、相楽様” 、でしょ」
なにやら親しげな感じ。
知り合い……ううん、友達なのかな。
「担当が相楽とか、まじで不運だなあんた」
突如、哀れみの視線を投げられた。