魅惑の絶対君主
「そーいうのが通用すると思ってんの?」
「ほ、本当ですっ。しばらくは帰って来ないと思うので、今日はお引き取りいただけたら──」
「ふざけたこと言ってんじゃねえ!」
隣にいた男性がガァン!と乱暴に扉を蹴った。
扉に穴が空くんじゃないかと心配になるほど力強い蹴りに、体はすっかり冷えきった。
「てめぇの母親がいようがいまいが関係ねぇんだよ。金を渡せ。ただそれだけだ」
唇を噛む。
お母さんは家にいない。
これは本当。
新しい彼氏ができたと言って出かけてから、もう一週間ほど帰ってきてない。
以前までは、お母さんがいない日は『次までに用意しとけ』と言って帰ってくれてたのに……。
この人たちの怒りを買って、取り立ての体制がさらに厳しくなって。
やっぱり夜逃げなんてするべきじゃなかったよ、お母さん。
「おい聞いてんのか。金出せっつってんだよ!」
「っ、ぅ」