魅惑の絶対君主
どうやらお風呂あがりらしく、髪が濡れている。
いや、今そんなのどうでもいい。
近くに来られたら困る……っ。
「気分は」
「あ、と、てもいいです」
「そ」
「はい。……なので、わたしのことは放っておいて大丈夫です」
「………」
「………」
逆効果だったみたい。
距離を詰めて、じっと見つめてくる。
「俺を遠ざけて逃げようとしてる?」
「へ? ……ち、違います、そんなことはしません」
「ここは10階だし、窓から逃げるのは危ないよ」
「やっ、ほんとに違うくって……」
まずい。
わたしの計画は従順を演じて相楽さんを油断させることなのに、逆に警戒されてる。