魅惑の絶対君主

どうやらお風呂あがりらしく、髪が濡れている。


いや、今そんなのどうでもいい。

近くに来られたら困る……っ。




「気分は」

「あ、と、てもいいです」

「そ」

「はい。……なので、わたしのことは放っておいて大丈夫です」


「………」

「………」



逆効果だったみたい。

距離を詰めて、じっと見つめてくる。



「俺を遠ざけて逃げようとしてる?」

「へ? ……ち、違います、そんなことはしません」


「ここは10階だし、窓から逃げるのは危ないよ」

「やっ、ほんとに違うくって……」



まずい。

わたしの計画は従順を演じて相楽さんを油断させることなのに、逆に警戒されてる。

< 48 / 245 >

この作品をシェア

pagetop