魅惑の絶対君主
「相楽、いきなりなんだよお前」
「その女まだ若いし、金になる体を傷つけんのは得策じゃないです」
ゆったりとした口調でそう答えたのは、一歩引いた場所からこちらを見ていた彼だ。
手前の二人より明らかに年下で意見できる立場じゃないだろうに、こんなことを言って大丈夫なのかな……?
余計に二人を怒らせるんじゃ……。
そんな不安に駆られたけど、やがて二人は不服そうにしながらも私から身を引いた。
あれ……? 助かった?
驚いたはずみで顔を上げる。
そんな私を気にも留めず、“相楽”と呼ばれた彼は、のんびりとした様子で煙草に火を付け始めた。
吐き出された煙が妙な沈黙に紛れて宙を漂う。
もしかして、助けてくれた、のかな。
一瞬、前向きに捉えてみたけど、至って無関心そうな彼に“助けてやった”という感覚はなさそうで。
お金になりそうな体を傷モノにするべきじゃない。
そう思ったから口にしただけ、という感じがしっくりくる。
その無関心な瞳が、ふと、わたしを捉えた。
「で、お前。今日は払えんの、払えねぇの」