魅惑の絶対君主
刹那、心臓が激しく脈を打つ。
冷たくも温かくもない視線。
けれど確かな鋭さを秘めてわたしを射抜いてくる。
微かに笑う口元が、それらと比べてアンバランスに映った。
……――怖い。
これまでの人生、色んな怖い思いをしてきたけど、段違いに怖い。
暴言を吐かれたわけじゃないのに。
暴力を振るわれたわけじゃないのに。
なんなら、この人のおかげで助かったのに。
怖い要素なんてないはずなのに……どうして?
わかんない。この感覚、うまく言語化できる自信がない。
ただ、この相楽って人だけは怒らせちゃいけないって本能が警告してくる。
――絶対に逆らえない。
「……払い、ます」
バイト代が入った封筒をスクバから取り出した。
「今月のバイト代の全額……八万円入ってます」
手前にいた一人が、雑にそれを受け取った。