魅惑の絶対君主
客観的に見ても、地獄絵図みたいにひどい現実。
だけど、目が覚めたとき相楽さんの体温がすぐ近くにあって、わたしはひどく安心した。
もしかして……一晩中、こうしててくれたのかな。
そう考えると、胸の左側が少し大げさに反応する。
それを誤魔化すようにブランケットをぎゅっと握って。
ついでに、その布がわたし側に偏っていることに気づいて、そっと相楽さんの肩に掛けた。
──『今日はこれで終わり』
あれは、意識が落ちる少し前の記憶。
あのとき目を閉じていたから、定かではないけど……確かに、唇が触れていた……と思う。
ほんの一瞬、たぶん、かすめる程度のキスだったんじゃないかな。
考えれば考えるほど自信がなくなっていく。
なんせわたしは恋愛経験ゼロ。
キスの感覚なんて、知らないんだもん。
でも、キスだったとしても、キスじゃなかったとしても、相楽さんの優しさを感じたのはたしかだった。