魅惑の絶対君主


わたしは三ヶ月後のオークションに出される商品。

相楽さんの手で、より価値のある体になるように仕込まれる。



目を逸らしたくなるほど辛い現実だけど……。


『ゆっくり眠りな』と、相楽さんがブランケットを掛けてくれたことは間違いないから。

今はそれだけで、いいと思えた。



かと言って、絆されたわけじゃない。

ここから逃げるっていう意思はきちんと残ってる。



ここは10階だというハナシだったけど……相楽さんが眠っている今なら、窓を使わなくても、抜け出せるんじゃ……?



突然、安易な考えが浮かんで、ごくっと息を呑んだ。


相楽さんの顔をまじまじと見つめる。


ちゃんと呼吸をしているのか不安になるくらい、すごく静か。

胸がわずかに上下していることを確認して、ひとまずほっと息をつく。

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