魅惑の絶対君主


よし。どこからどう見ても眠ってる。

確かめていると、次第に手に汗が滲んできた。



本気で、今、逃げようと思ったわけじゃない。


でも、もしかしたら逃げられるかもしれないという可能性が、少しの興奮と派手な緊張を呼び起こしているんだと思う。



大丈夫、実行はしない。

なんたって気が早すぎる。


普通に考えれば、部屋の内側から鍵を開けて外に出るのはとても簡単だけど、
相楽さんが易々とそんな状況をつくるとは考えられない。



それに、寝てる間に逃げるなんて、保育園児でも考えられることだし……。


何か対策されてるって考えるのが妥当だよね。


でもせっかく相手が眠ってるんだから、このチャンスは有効活用すべき。


まずは、相楽さんはどの程度の刺激で起きるのかを検証するのがいいかも。

うん。我ながら名案では……?



ひとり脳内会議を済ませて、いざ、ブランケットに手をかける──やいなや。



< 73 / 245 >

この作品をシェア

pagetop