魅惑の絶対君主
よし。どこからどう見ても眠ってる。
確かめていると、次第に手に汗が滲んできた。
本気で、今、逃げようと思ったわけじゃない。
でも、もしかしたら逃げられるかもしれないという可能性が、少しの興奮と派手な緊張を呼び起こしているんだと思う。
大丈夫、実行はしない。
なんたって気が早すぎる。
普通に考えれば、部屋の内側から鍵を開けて外に出るのはとても簡単だけど、
相楽さんが易々とそんな状況をつくるとは考えられない。
それに、寝てる間に逃げるなんて、保育園児でも考えられることだし……。
何か対策されてるって考えるのが妥当だよね。
でもせっかく相手が眠ってるんだから、このチャンスは有効活用すべき。
まずは、相楽さんはどの程度の刺激で起きるのかを検証するのがいいかも。
うん。我ながら名案では……?
ひとり脳内会議を済ませて、いざ、ブランケットに手をかける──やいなや。