魅惑の絶対君主

よかった。
どの程度の刺激で起きるのか……とか検証しなくて。


ふわっとあくびをしながら上体を起こした相楽さん。

つられてわたしも起き上がる。



「相手の寝ている隙を狙って逃げる……いい判断だと思うよ。俺でもそうするし」


な……っ。

嘘でしょ。

どうして脳内を見透かしたようなことばっかり言うんだろう。

空いた口が塞がらない。


もしや、無警戒を装いわたしを泳がせて、楽しんでるんじゃ……。



「た、たしかに今なら逃げれるんじゃないかって、ちらっと頭をよぎったけど、実行に移す度胸も気力もないです」


「うん、そのほうがいい。たとえ俺が今死んだとしても冬亜は逃げられない」



相楽さんはあっさりそう言った。

“死ぬ”なんて、そんな……。


< 75 / 245 >

この作品をシェア

pagetop