魅惑の絶対君主
よかった。
どの程度の刺激で起きるのか……とか検証しなくて。
ふわっとあくびをしながら上体を起こした相楽さん。
つられてわたしも起き上がる。
「相手の寝ている隙を狙って逃げる……いい判断だと思うよ。俺でもそうするし」
な……っ。
嘘でしょ。
どうして脳内を見透かしたようなことばっかり言うんだろう。
空いた口が塞がらない。
もしや、無警戒を装いわたしを泳がせて、楽しんでるんじゃ……。
「た、たしかに今なら逃げれるんじゃないかって、ちらっと頭をよぎったけど、実行に移す度胸も気力もないです」
「うん、そのほうがいい。たとえ俺が今死んだとしても冬亜は逃げられない」
相楽さんはあっさりそう言った。
“死ぬ”なんて、そんな……。