魅惑の絶対君主


急いでベッドルームに戻った。



「GPSって、このチョーカーのことですかっ?」

「うん、そう」


「この鍵穴は……鍵がないと解除できないって、こと? だから、相楽さんが死ん、でも……逃げられないの?」

「そーそー」



真剣に尋ねているのに、スマホを触っている相楽さんはまるで話を聞いていない。

……ように見せかけて。



「そのGPSの情報、俺だけじゃなくて俺の同僚にも共有されてんだよ。そして鍵は事務所が管理してる」



スマホに目を落としたまま、丁寧に説明してくれた。



「裁ちバサミやらペンチやら使えば引き千切ることは可能だろうね。だけどロックが掛かった状態で強い衝撃が加われば直ちに通知が出されるから、逃げ出す前にうちの野郎共に捕まって終わり」



絶望的な事実を機械のように淡々と告げるから、よっぽど怖い。


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