魅惑の絶対君主
「いいんじゃない。冬亜は逃げないでしょ」
「………」
「少なくとも、“今”は」
「……そう、ですね」
くすっと笑われる。
やっぱりお見通しなんだ。
逃げないっていうか、逃げられないんだよ。
あんな脅し方されたら。
「ここから出ない限りは好きにしてていいよ」
「……はい」
「あ、それと。帰ったら頑張ろうね」
「へ?」
一瞬なんのことかわからず首を傾げた。
「昨日の夜、“ちょっとでも高く売れるように頑張ります”って言ったでしょ」
心臓がドクッと大きく跳ねる。
「……わかり、ました」
そう小さく返事をして見送ったあと。
昨日相楽さんに触れられた部分が、ゆっくりと熱を持つのを感じた。