魅惑の絶対君主


店長の電話番号は覚えてるけど……。

見渡しても部屋に固定電話らしきものはなく、項垂れる。


現在、午前11時を過ぎたところ。



いくら考えてもなす術はないのに、あまりの申し訳なさから課題どころじゃなくなってしまった。


教科書の英文の同じところをひたすら眺めているうちに、部屋の時計は11時半を回った。


──そのとき。


ピン、ポーンと音が聞こえた気がして、ハッと顔を上げる。



相楽さんが帰ってきたのかなと一瞬考えたけど、自宅に入るのにわざわざインターホンは鳴らさないだろうなと思って。


だとしたら、お客さん……?


わたしは余所者。

居留守を使うべきだと判断した矢先に、もう一度インターホンが鳴った。


立ち上がって、そろりそろりと画面の前に移動する。


カメラに映るのは、当然のことながら知らない人。


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