魅惑の絶対君主
「すみませんっ、やっぱり大丈夫です」
「いや! オレのでよければどうぞ!」
「えっ。ほんとにですか?」
親切な人でよかった……。
改めてまじまじと見ると、思いのほか相手が若かったことに気づいた。
わたしよりは少し上に見える。
相楽さんと同じくらいかな……?
と思いつつ、そういえば相楽さんの年齢をまだ知らない。
ありがたく拝借したスマホに店長の電話番号を打ち込むと、ワンコール目で出てくれた。
急に引っ越しが決まったこと、今日のシフトを含め、今後恐らく続けられないということを伝えれば、
『大変だったね、わざわざ連絡ありがとう』と言われ、うっかり泣きそうになる。
店長さんはわたしの家の事情を知っていて、いつもなにかと気にかけてくれた。
「最後までご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。今まで本当にありがとうございました。……お元気で」