魅惑の絶対君主
「皿、テーブルに出しといて」
そう言って相楽さんはクローゼットのほうに歩いていった。
一拍遅れて嬉しさがやってくる。
急いで台所に移動して、冷蔵庫からお皿を取り出した。
豚の角煮って、レンジで温めすぎると爆発しちゃうって、中学の頃に家庭科の先生が言ってたきがする。
『10秒』のボタンを3回押して、あたためスタート。
このくらいだったら爆発は免れるかな。
せっかくだから温かいものを食べてもらいもんね。
レンジの中で回転する角煮をじっと見つめる。
残り10秒を切っても爆発の気配はない。
チーンという音とともにレンジを開けると、ふわっとジューシーなお肉の匂いがした。
それにしても……と、今使ったレンジやシンク周りを見渡す。
3口コンロやら食洗機やら炊飯器やら。
贅沢なくらい揃っているのに、どれもまるで新品同様、使った形跡がほとんどない。