魅惑の絶対君主
思えばシンク周りだけじゃない。
どの部屋もテーブル、椅子、ソファ、ベッドっていう必要最低限な家具しかないおかげで、ただでさえ広い家がさらに広く感じる。
最近は“生活感がない部屋”っていうのが流行ってるってレオくん言ってたけど、まさにここがそのお手本みたいな空間だ。
相楽さんの場合、意識して生活感をなくしてるわけじゃなくて、ほんとに必要ないって感じなんだろうな。
わたしが住んでたアパートも家具自体は少なかったけど、
お母さんのお洋服やコスメやバッグたちがきらきらしてていつも明るかった。
お母さん、今どこで何してるんだろう……。
「冬亜」
「──っ!?」
振り向いたら相楽さんがいた。
いつもまるで気配がないの、心臓に悪い。
「い、今温めたので食べてください」
「どうも。ところで、風呂入れてくれたんだ?」