悲劇のフランス人形は屈しない3
長細い円形の半透明のカプセルの前に誘導された時には、緊張して心臓が破裂しそうだった。それに気づいたのか、白石透が私の手を握った。それから不安そうな私に向かって、優しく声を掛けた。
「本当に記憶を消さなくていいの?嫌な思い出は消すことが出来るのよ」
私は大きく頷いた。
「私が杉崎凛子として生きていたことも、ここでるーちゃんと出会ったことも全て覚えていたい」
「え!ここでの記憶は消すよ?」
カプセルに何やら打ち込んでいる少年は驚いたようにこちらを向いた。
「消さないで欲しいわ」
「シン君と出会ったことも覚えていたいのに」
戸惑っている少年に向かって、私たちは懇願するような表情を作った。
「ダメ!そんな顔をしても、ダメなものはダメ!」
そして設定が終わった「杉崎凛子」のカプセルに入るように白石透を呼んだ。
「ほら、るーちゃん。行く時間だよ。ご希望通り、事故の一日後に設定しておいたから」
白石透は私の手を離すと、カプセルの中に入った。
「凛ちゃん、また会いましょうね」
そう言って笑顔を作った。
「うん、絶対に」
私がそう答えたのと同時にカプセルの扉が閉まり、カプセル内が真っ白になった。そして濃い靄が晴れた時には、白石透の姿はどこにもなかった。
「さ、今度は凛ちゃんの番だよ」
シン君が機械に入力しながら言った。
「時間は戻さなくていいよね。また突き落とされるのは嫌でしょ」
何が面白いのか、にやりと笑っている少年を私は睨みつけた。
「そうだね。すぐにここに戻ってくることになるもんね!今度は私が、“るーちゃん版杉崎凛子”の人生を観察しようかな」
「あはは。それもいいね!」
嫌味が通じてないのか少年は愉快そうに笑っている。
「昏睡状態どれくらいがいい?事件解決も期待して、2か月くらい寝とく?」
「お任せで」
冗談まじりに言っているシン君を横目に、私はカプセルの中に入った。
「これで良し。それじゃあ、今度は長生きしてね」
シン君がそう言うとカプセルの扉が閉まった。心臓がドキドキし体が震えていたが、それもすぐさま収まり、私は深い眠りに就いた。
「本当に記憶を消さなくていいの?嫌な思い出は消すことが出来るのよ」
私は大きく頷いた。
「私が杉崎凛子として生きていたことも、ここでるーちゃんと出会ったことも全て覚えていたい」
「え!ここでの記憶は消すよ?」
カプセルに何やら打ち込んでいる少年は驚いたようにこちらを向いた。
「消さないで欲しいわ」
「シン君と出会ったことも覚えていたいのに」
戸惑っている少年に向かって、私たちは懇願するような表情を作った。
「ダメ!そんな顔をしても、ダメなものはダメ!」
そして設定が終わった「杉崎凛子」のカプセルに入るように白石透を呼んだ。
「ほら、るーちゃん。行く時間だよ。ご希望通り、事故の一日後に設定しておいたから」
白石透は私の手を離すと、カプセルの中に入った。
「凛ちゃん、また会いましょうね」
そう言って笑顔を作った。
「うん、絶対に」
私がそう答えたのと同時にカプセルの扉が閉まり、カプセル内が真っ白になった。そして濃い靄が晴れた時には、白石透の姿はどこにもなかった。
「さ、今度は凛ちゃんの番だよ」
シン君が機械に入力しながら言った。
「時間は戻さなくていいよね。また突き落とされるのは嫌でしょ」
何が面白いのか、にやりと笑っている少年を私は睨みつけた。
「そうだね。すぐにここに戻ってくることになるもんね!今度は私が、“るーちゃん版杉崎凛子”の人生を観察しようかな」
「あはは。それもいいね!」
嫌味が通じてないのか少年は愉快そうに笑っている。
「昏睡状態どれくらいがいい?事件解決も期待して、2か月くらい寝とく?」
「お任せで」
冗談まじりに言っているシン君を横目に、私はカプセルの中に入った。
「これで良し。それじゃあ、今度は長生きしてね」
シン君がそう言うとカプセルの扉が閉まった。心臓がドキドキし体が震えていたが、それもすぐさま収まり、私は深い眠りに就いた。