好きを君に。


家までの帰り道、頭に過ぎるのは、さっきの千香の言葉だった。

”じゃあ、告白しとけば?”

告白、かあ……。
考えた事がなかったわけではないけど、告白しようか思う度に、恥ずかしくなって結局考えることを放棄してしまう。

だって、あたしが藤崎に告白?
告白してそのあとは?
もし、いいよっていわれたら、そしたら、付き合うってことだよ、ね?
あたしと藤崎が?
そんなの、考えらんないよ。

だけど、確かに、このまま卒業して、あたしはこの気持ちをどうするんだろう。
クラスLINEがあるから、連絡しようと思えばできるけど。

でも。
なにか理由を作らなくても、
気持ちを悟られずに簡単に会うことができるのは、今だけで。

卒業したら、もう、会いたい時に会えない。
ただの、毎日小競り合いしてる関係なんだから。

この気持ちを中途半端にもったまま、あたしは、前に進めるのかな。

「…………」

雲ひとつない青空を見上げて、考えがまとまらなくなってきたあたしは、はあーと息を吐いた。


……もし、気持ちだけ。

気持ちだけ伝えるタイミングがあれば、伝えてみようかな。


考えを放棄しそうになったあたしは、なんとかそんな弱気な決意を心に秘めて。
できたらね。とだれにいうわけでもなく、言い訳のように心の中で付け足すのだった。


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