好きを君に。
その雰囲気を変えるのは。
「言い合いするから、もっと人気のないとこでしてよ」
やっぱり、千香だった。
声に反応してその方向をむくと、すでにめんどくさそうな顔をしている千香がいた。
「人目もあるのに、恥ずかしい」
そういわれたあたしと藤崎は周りを見渡して、不審そうに見ている人達がいることに気づく。
恥ずかしい。
さっきまでぜんぜん人いなかったのに。
羞恥心が生まれたのは、藤崎も同じだったようで。
視線をあたしたちから逸らして、虚空をみつめていた。
「んじゃそろったし、行こうぜ」
タイミングを見計らった桐野がそういって、あたしたちは反論することなく、全員で神社の中に入った。
……また、言い合いしちゃった。
いや、でもあれは藤崎が悪いよね?
人の服装見て気持ち悪いとか失礼すぎでしょ。
あたしも不審者とかいっちゃったけど……。
可愛いって、思われたかっただけなのに。
前を歩く藤崎と桐野の背中を見ながら知らずに吐息が漏れた。
やっぱり、藤崎はあたしのこと女子としてみてないんだろうなあ。
少なくとも、意識している女子にあんな反応はしないよね。
手水舎で手を清めて、参道を歩く。
賽銭箱までは、人が少ないこともあってすぐに着いた。
お金を投げ入れて、二礼二拍手をして祈る。
どうか、全員が無事に高校に受かりますように。
ダメ押しで強く念じてから、ゆっくり目を開ける。
桐野も千香も目を開けていたけど、藤崎はまだ祈っていた。
藤崎が目を開けるのを待って、階段を降りる。
「如月、めっちゃ早くなかった?」
「挨拶しただけだから」
「え? 合格祈らなかったの?」
「神頼みしても、結局自分の実力だし」
しれっという千香は相変わらずクールだ。
「それに、お正月もしたのに、何度も頼むなんてしつこいし」
「俺も正月もしたよ!」
千香の言葉に、藤崎がかみつく。
「神様だし、そのへんは気にしてないって」
桐野のフォローに、そうだよな!と藤崎が同調する。
千香はもう我関せずの顔だ。
「じゃあ帰る?」
「え、せっかくだしおみくじとかひこうぜ」
「あたしもひきたーい」
藤崎の提案にあたしも乗っかる。
少しでも長くいたいという欲もある。
「凶とか引いたら笑えるけどね」
「縁起でもないこといわないでよ」
「可能性としてはあるからね」
ほんと冷めてるな、千香は。
そのままおみくじが置いてある場所まで、藤崎と桐野、あたしと千香で歩く。