好きを君に。
「似たもの同士」
「だれとだれが?」
「遥と藤崎」
「どこが?」
「能天気なとこ」
ズバッといわれた言葉に、思わず眉間に皺がよった。

なにそれ。
全然嬉しくないんだけど。

「波長が合ってるっていうことでしょ」

心の声を正確に読み取る千香。

いい加減人の心の声に答える性格どうにかならないかな。

「無理。遥、わかりやすいもん」

即答された言葉に、そうですか。と肩をおとす。
一生こんな会話をしている気がする。

社務所に置いてあるおみくじの箱を回してから、逆さにする。
なかなかでてこなかったが、ふり続けてようやくでる。

社務所の中にいる人に番号を告げて、折りたたんだ状態で受け取る。
あたしが後ろを振り返ると、すでに全員が手元に持っていた。
一応待ってくれていたらしい。

せーの、でみんなで開ける。
こういうときって、少しどきどきする。

パッと開くと、末吉だ。

……なんとも微妙。
ついつい、恋愛に目が吸い寄せられる。

そこには一言。
『困難を乗り越えれば、幸あり』

困難、か……。
困難だらけだし、乗り越えられる気がしない。

学問は『勉強に勤しめば吉』だった。

「千香、どうだった?」
一通り目を通したあと、既に見てもない千香に聞くと、無言で紙をみせられる。

「大吉じゃん。いいなー」
ひょい。と隣からのぞきこんだ桐野がうらやましそうにいった。
桐野の手元のおみくじには中吉と書いてある。

そして藤崎は。
三人でみると、ガーンと上に文字が見えるくらい虚ろな目をしていた。
いい結果ではないことだけは間違いない。

「凶とか。ありえなさすぎる」
ぶつくさつぶやきながら、はあとため息。

その言葉にあたしは思わずふきだしてしまった。

こんな受験直前期に凶をひくとか。
運が悪すぎて他人事なので笑える。

ふきだしてしまったあたしを藤崎がジロリと睨む。

「笑うな! お前はさぞよかったんだろうな!」
「末吉だけど?」
別に威張れる結果ではないのにニコニコしながらいうと、藤崎は「そんなよくないのにいばるな!」と噛み付いてくる。
「俺、元旦のときは吉だったし、これはノーカンだ。ノーカン」
「まーでも、凶の場合、もうあがることしかできないから、いいんじゃない?」
「たしかに! それはいえる!」
千香の冷静な言葉に、藤崎が指をパチンと鳴らしてあっさり立ち直る。

単純だなあ。

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