好きを君に。
「待って!!」
叫んでから、我に返ると、目に飛び込んできたのはいつもの自分の部屋の天井だった。
身体をゆっくり起こすが、思考が追いついていかなくて、今が現実なのか夢なのかの判断ができない。
「……いまの、ゆめ?」
落ち着いてきて、ようやく思考が正常に戻る。
無意識に、安堵の息が漏れる。
「リアルすぎる……」
地面が崩れるとかはありえないけど、その前の断られ方はありえすぎる。
告白する前からフラれるとか。
「てかさむ……」
身震いすると、自分が汗びっしょりなことに気づいた。
布団も寝汗で湿っている。
頭がぼーとしていた。
思考回路がまとまらなかったけど、おそらく事態は良くないことだけはなんとなくわかった。
「体温計、とりにいこ……」
身体を起こして、ベットから降りると世界が不安定に揺れた。
……これは、やばい気がする。
「遥、入るよ」
ガチャリと音がして、お母さんが入ってくる。
顔をのぞかせて、あたしを目に止めると、なんだ。起きてるじゃないとため息をついた。
「そろそろ起きないと遅刻するよ」
「お母さん、体温計ってどこだっけ?」
「え? あんた体調悪いの?」
お母さんが私の元まで来て、額に手を当てる。
「少し熱いか。顔色も悪いな…。ちょっと待ってて」
慌てたようにいうとパタパタ走って出ていく。
体温計をとってきてくれたお母さんはあたしに差し出したので測った。
ピピッと音が鳴ったのでとってみてみると、38.7度だった。
お母さんにも見せると、「あーあ」と肩を落とす。
「あんた今日学校休みなさい」
「やっぱそうなるよね…」
「当たり前でしょ。他の子に移したら大変だし、無理して明日受験できなかったらどうするの」
お母さんがいったことは正論でぐうの音も出ない。
「とりあえず病院行くわよ。インフルエンザだったら大変。着替えられる?」
「……うん」
「じゃあいつものとこいくから、9時くらいには降りてきてね。お母さんは学校と会社に電話するから」
「はあーい」
あたしの返事を聞いてお母さんはまたパタパタ駆けていった。
まだ一時間くらいあるな……。
勉強でもしようかと一瞬思ったけれど、とても動く気にもなれなくてあたしはそのまままた眠ってしまった。