好きを君に。

結局9時前にお母さんに起こされて、フラフラになりながら病院に向かった。
病院でインフルエンザの検査をしたけど、陰性で、たぶんただの風邪だろうということだった。
とりあえず一安心。
あとは明日までに熱が下がるかだけだ。

家に帰って、新しいパジャマに着替えて、お母さんが作ってくれたおかゆを食べた。
「お母さん、今日は仕事休んだから」
薬を飲んだあたしに、お母さんが布団をかけてくれながらいう。
「……ごめんね。ありがとう」
「なんで謝るのよ。とりあえず明日までに治せるように寝ときなさい」
「うん」
お母さんはにっこり笑うと、頭を撫でて部屋を出ていった。

チッチッチッ

時計の音がやけに耳に響く。
寝たいのに、目を閉じてもなかなか眠れなかった。

勉強をする気にもなれなくて、天井をぼーとみながら、今日の夢を思い出す。

あまりにも、リアルで。
千香が好きなのは意外すぎるけど。

今までちゃんと、考えたことがなかったけど。
藤崎は、好きな子とか、実はいたりするのかな?
千香はあの日の帰り道にそれを知って止めてくれた?

……藤崎にとってあたしって、
やっぱりただのケンカするだけの存在なのかな?

口悪いし可愛くないし好かれる要素が思いつかない……。

熱のせいかネガティブなことばかり頭をよぎって、手で顔を覆った。

こんな時でも、思い浮かべるのはいつだって藤崎で。

藤崎に、会いたい。

思い知らされる。
ああ、あたしは。
こんなにも、藤崎が好きなんだ。

こんなことより考えなきゃいけないのは、明日の受験のことなのに。
明日、受験できなかったら最悪だ。
なんとかして熱だけは下げないと……。

まとまらない思考をぐるぐるとしていると、いつのまにかあたしの意識は途切れていた。



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