好きを君に。
あたしたちは近くにある大きな公園のベンチに腰掛けた。
「それじゃ、受験お疲れ様」
「おつかれさまー」
二人で缶ジュースを開けて乾杯する。
温かいココアを買ったあたしは、両手で握りしめながらちびちび飲む。
「やっと終わったなー」
「ほんとだよー」
「俺、帰ったらゲームするとりあえず」
「あたしは溜まってるドラマでもみようかなー。今日は夜更かしする!」
中学三年生になってからずっと受験受験と言われ続けて、夏休みも冬休みも勉強しなきゃというプレッシャーがあったから、それが終わっただけでも心の軽さがだいぶ違う。
高校入学までは一旦勉強のことは忘れたい。
「学校ももう卒業式の準備ばっかりになるから勉強しなくていいしな」
「そうだよね! 合格発表がでたらめちゃくちゃ遊ぼっと」
考えれば考えるほど楽しみになってくる。
その後は桐野と他愛もない学校の話や家族の話をした。
桐野と話す時間は楽しくて、気づけば太陽が沈み出していた。
「え、もう結構たったね」
世界が橙色に模様替えを始める頃、公園の時計を見たあたしは思わず声をあげる。
なんだかんだ話し込んでしまった。
「そろそろ帰ろっか?」
「そうだな」
「缶、捨ててくるよ」
「ありがとう」
桐野から缶を受け取って、公園のゴミ箱に捨てに行く。
ベンチに戻って荷物を取ろうとするあたしの手首をふいに桐野が掴んだ。
……え?
振り払えないくらいの力で掴まれて、しばし桐野と見つめ合う。
「……どうしたの?」
「さっき今日の英作文の話したじゃん」
ようやくそう聞いたあたしに、桐野は質問には答えずに、今日の試験の話を始める。
「え、うん」
「俺、高坂のこと思い浮かべたよ」
あたしのこと?
なんでか理由がわからず目線を瞬かせる。
桐野の切れ長の瞳があたしを射抜いて、どくん、と心臓が大きな音をたてた。
「高坂と同じ高校に通いたいって思ったから」
疑問の答えは、さらに頭を混乱させる。
もしかして、とまさか、の思いが脳内を駆け巡った。
「なんでだと思う?」
桐野はいたずらっ子のような笑みを浮かべてあたしに答えを求めてくる。
その答えを聞けばもう後戻りができない気がして答えることが出来なかった。
桐野の顔から笑みが消えて、意を決したように口を開く。
「俺がさ」
その一呼吸はとてつもなく長く感じた。
「高坂のこと、好きだからだよ」
それは、受験が終わった日。
十五年間生きてきて、初めていわれた言葉。
あたしと桐野だけが世界から切り離されたように周りの音が消えた。
「それじゃ、受験お疲れ様」
「おつかれさまー」
二人で缶ジュースを開けて乾杯する。
温かいココアを買ったあたしは、両手で握りしめながらちびちび飲む。
「やっと終わったなー」
「ほんとだよー」
「俺、帰ったらゲームするとりあえず」
「あたしは溜まってるドラマでもみようかなー。今日は夜更かしする!」
中学三年生になってからずっと受験受験と言われ続けて、夏休みも冬休みも勉強しなきゃというプレッシャーがあったから、それが終わっただけでも心の軽さがだいぶ違う。
高校入学までは一旦勉強のことは忘れたい。
「学校ももう卒業式の準備ばっかりになるから勉強しなくていいしな」
「そうだよね! 合格発表がでたらめちゃくちゃ遊ぼっと」
考えれば考えるほど楽しみになってくる。
その後は桐野と他愛もない学校の話や家族の話をした。
桐野と話す時間は楽しくて、気づけば太陽が沈み出していた。
「え、もう結構たったね」
世界が橙色に模様替えを始める頃、公園の時計を見たあたしは思わず声をあげる。
なんだかんだ話し込んでしまった。
「そろそろ帰ろっか?」
「そうだな」
「缶、捨ててくるよ」
「ありがとう」
桐野から缶を受け取って、公園のゴミ箱に捨てに行く。
ベンチに戻って荷物を取ろうとするあたしの手首をふいに桐野が掴んだ。
……え?
振り払えないくらいの力で掴まれて、しばし桐野と見つめ合う。
「……どうしたの?」
「さっき今日の英作文の話したじゃん」
ようやくそう聞いたあたしに、桐野は質問には答えずに、今日の試験の話を始める。
「え、うん」
「俺、高坂のこと思い浮かべたよ」
あたしのこと?
なんでか理由がわからず目線を瞬かせる。
桐野の切れ長の瞳があたしを射抜いて、どくん、と心臓が大きな音をたてた。
「高坂と同じ高校に通いたいって思ったから」
疑問の答えは、さらに頭を混乱させる。
もしかして、とまさか、の思いが脳内を駆け巡った。
「なんでだと思う?」
桐野はいたずらっ子のような笑みを浮かべてあたしに答えを求めてくる。
その答えを聞けばもう後戻りができない気がして答えることが出来なかった。
桐野の顔から笑みが消えて、意を決したように口を開く。
「俺がさ」
その一呼吸はとてつもなく長く感じた。
「高坂のこと、好きだからだよ」
それは、受験が終わった日。
十五年間生きてきて、初めていわれた言葉。
あたしと桐野だけが世界から切り離されたように周りの音が消えた。