好きを君に。
「そうしたら高坂が気になりだして、いつのまにか好きになってた。だから、高坂が義理チョコでもバレンタインにチョコをくれて俺は嬉しかった」
あ……。
それは、何の気なしにあげたはずの今年のバレンタイン。
友達の近くにいて、余ったからついでのようにあげただけなのに。
「そんな理由じゃ、だめ?」
上目遣いにあたしをみる桐野に、あたしは思わず顔を背けてしまう。
「だ、だめじゃないよ…」
「よかった。それに、ここ最近話してて、高坂といると楽しくて、飽きないし、もっと好きになった」
ーー!!
いともたやすく好きという矢を浴びせる桐野に、あたしはどんな反応をすればいいか分からなかった。
だって、男の子に。
男の子に、こんなふうに好きと言われたことなんてない。
「……桐野、でもあたし」
でもだからこそ、あたしは正直になるべきだと思った。
好きな人がいるって、いうべきだって。
だけど桐野は、言わせてくれなかった。
「悠哉も、俺の気持ち知ってるよ。協力だってしてる」
え……。
その名前に、意味に、今度は別の意味で驚きを隠せない。
「……高坂が悠哉を見てることなんて知ってる。俺だって高坂のこと見てるんだから」
あたしの頭が真っ白になって、何も考えられなくなっていく。
「合格祈願だって俺のために誘ってくれた。あの日の帰りだって、ほんとは悠哉は俺たちと同じ方向なのに、如月と帰った。悠哉は俺の気持ち知ってて、応援してくれてる」
それが何を意味するのか、あたしは知りたくなかった。
『きついこというけどさ、藤崎、まだあんたのこと恋愛対象としてみてないよ』
千香の言葉が、頭の中でリプレイされる。
たぶん、千香はこのことを知ってたんだ。
藤崎から聞いたのか自分で気づいたのかはわからないけど。
だから、あたしにあんなこといったんだ。
……だって、そうだよね。
もしあたしのこと好きだったら、桐野に協力なんかしないよね。
「俺のこと、ちゃんと考えてみてほしい。返事は急がない」
こんなときでも、あたしが考えるのはあいつのことなのに。
桐野の真っ直ぐな目が、あたしの心を揺さぶる。