好きを君に。
「高坂、おはよ」
「あ、お、おはよう」
次の日の朝も、桐野は普段通りだった。

自然と桐野を目で追って、あたしはどきどきしてしまう。

昨日のことなんて、あたしの夢だったみたいだ。

桐野があたしの視線に気づいて、目がバッチリ合う。
爽やかな笑顔を浮かべられて、あたしは思いっきり顔を伏せてしまった。

さすがに夢ではないよね。
桐野にあたし、告白されたんだ…。

「きり、おはよー」
「おはよ」
藤崎の声が聞こえてハッと顔を上げる。
眠そうに欠伸をしている藤崎が桐野と話している。

胸がズキンと軋む。
協力してくれている、という桐野の言葉が耳の中でこだまする。

藤崎はあたしのことなんて、なんとも思っていない。
何度も何度もそれがあたしの心を切りつけてくる。

あたし、藤崎と話せるのかな…。


実際は、受験が終わるとあとは卒業式を残すだけで、授業はないし、そもそも藤崎と話すタイミングはなかった。
学校も昼までで終わるし。
だから何事もなく終わる、と思っていた。


「高坂」
学校が終わって帰ろうとすると、桐野に呼び止められた。
「は、はい」
「一緒に途中まで帰らない?」
「え、でもあたし千香と帰るから……。それに藤崎は?」
「如月も一緒に。悠哉は急ぐからっていって先に帰った」
「……私、邪魔者?」
ただならぬ雰囲気を感じたのか、千香がずばりと聞いてきてあたしは口ごもる。
「そんなことないよ」
桐野は苦笑して否定したが、千香はじーとあたしをみてくる。
「ち、ちかも一緒に帰ろ」
桐野と二人きりとかどうしたらいいかわからなさすぎるから、あたしは千香に助けを求める目をした。
千香は気づいてくれたのか、はいはいといいたげな感じで頷いて、「じゃあ帰ろ」とあたしたちを促した。
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