好きを君に。
「でも、桐野は告白してくれたんだね」
「……え?」
「遥の気持ちしってて、告白してくれたんでしょ?」
そういった千香に、そのことに気づいてなかったあたしは衝撃を受けた。

たしかに、そうだ。
桐野はあたしの気持ち知ってて、告白してくれたんだ。

「私は恋とかよくわかんないけどさ、それって、すごい勇気のいることなんじゃない?」
「……うん」

それはあたしにはなかった勇気。
気持ちが実らないとわかりながらも、告白する勇気なんて、あたしにはない。

「……ちゃんと、答えなきゃ、いけないよね」
「あんた返事してないの?」
「ああ、うん。ちゃんと考えてっていわれて、藤崎が協力したとかいうから頭真っ白なっちゃって」
「……桐野と付き合う可能性、あるんだ?」
「……分かんない。けど、あんなにまっすぐ男の子に好きっていわれたことなくて」

自分がだれかと付き合う想像なんてしたことがなかった。
あたしの妄想は想いを伝えるまでで終わり。
その後にどんな物語があるのかなんて、考えようとしても考えられなかった。

「ふうん。まあ、遥がいいなら桐野のほうがいいんじゃない?」
「……え?」
「あんたと同じ精神年齢の藤崎とぎゃいぎゃい騒ぐより、桐野のほうが精神的に大人でちゃんと大事にしてくれそうだし。高校も一緒だしね」
たしかに、とあたしも笑ってしまう。

藤崎と付き合うより桐野と付き合う方が想像できるかも。
あたしと藤崎が付き合ったら……いつまでも言い合いしてるのかな?

「どっちにしても藤崎と付き合える可能性なんてないしね」
自虐して笑ったあたしに、千香はなにもいわずポンと頭を撫でた。
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