好きを君に。
「なんもいってないよ。だから、離して」
「うそつけよ。明らかに変だろ。ここ数日も、俺のこと避けてたよな?」

……っ。
気付かれてた。

「藤崎の、気にしすぎでしょ」
「とぼけんなよ」
いらいらしたようにいう藤崎が、逆にあたしの神経を逆撫でした。
「……うるさいな」
「は?」
「なんもないっていってるじゃん!」

こんな、トゲのある言い方なんてしたくないのに。

「なんもないとかうそだろ! なにか文句があるならいえよ!」
語気を強くした藤崎のその言葉を聞いた瞬間、あたしが理性で止めていたストッパーが外れてしまった。

「あたしのことなんとも思ってないんでしょ!?」

取り返しのつかない言葉だと気づいたのは、藤崎がぽかんとバカみたいな顔をした瞬間。
かあっと頬に熱が走ったけど、もう感情が止められなかった。

「桐野に協力して? あたしに桐野と付き合えば?なんていって?」

せきをきるようにあふれだす。

「あたしの気持ちがどうなのか考えてもないんだね」


ーーもう、いい。
どうでもいいや。

だって高校も違うし。
もうすぐこんなふうに話すことも出来なくなる。

それなら、もういい。


「藤崎にだけは。藤崎にだけは、そんなことしてほしくなかったのに」
「高坂! ちょっとまて! なにいってたんだおまえ!」
「……ばかみたい。ほんとに、ばかみたい。期待しても、なにもなかったのに」


少し自惚れたの。
藤崎に一番近い女の子はあたしなんじゃないかって。
もしかして藤崎も、あたしのこと少しは女の子として見てくれてるんじゃないかって。

そんなこと、あるわけないのに。

好きな女の子だったらあんな態度しないし。
ほかの男の子勧めないはずだし。
協力なんて、しないもん。
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