好きを君に。
「えーそうなのー? でももう卒業だよね? 高校一緒なの?」
「ううん。違う」
「え? じゃあもうお別れじゃん! 告白は?」
「……わかんない」
「えー! 千紗だったら絶対告白するのに!!」
力強くいう千紗ちゃんに思わず笑ってしまう。
「千紗もさー好きな人いるんだけど、卒業式に告白するよ!」
「え、そうなの?」
「うん! 多分振られるけどねー」
サバサバしてる千紗ちゃんに、あたしはびっくりしてしまう。
「え? 振られるってわかってるのに告白するの?」

「うん! なんか変な噂回ってて、千紗がほかの男子好きだと思っててさーそんな誤解されたくないじゃん」
満面の笑みをあたしに向ける千紗ちゃん。
「振られても自分で気持ち伝えたから後悔しないし。もしかしたら気づいてないだけで千紗のこと好きかもしれないし? 一発逆転もあるかもって思ってる!」
「すごいね」
あたしは思わず感心してしまう。

あたしより年下なのに。
自分が情けなく思えてくる。

「すごいの? だって好きな人には、自分の気持ち知っててほしいじゃん!」

ピュアな想いがあたしの心に刺さる。

誤解されたくない。
自分の気持ち知っててほしい。
それはあたしだって、思ってることだ。

あたしはずっとウジウジウダウダしてるけど。

「それに千紗が動かないと今と変わらなくて、ずーっと片思いになるでしょ? そんなのやだもん。もう気持ちを伝えたいくらい、大好きだし。好きな人とは一緒にいたいし、笑い合いたいし、そばにいたくない?」
「そうだね。うん。あたしも、そう思う」
「でしょ! 遥ちゃんもバラ色の学校生活にしよう!」
千紗ちゃんが共鳴して、ぎゅっと手を握る。
「一緒に頑張ろうね!」
「う、うん」
「あ、まって。千紗、彩月ちゃんと会う約束してたんだった!」
ふいに時計をみた千紗ちゃんが思い出したように立ち上がる。
「遥ちゃん、またね! また結果聞かせてね!!」
そのままドアを開けて去っていく千紗ちゃんをあたしたちは呆然と見つめた。
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