好きを君に。
「なんか、台風みたいだね」
ドアを見つめていたあたしが笑いながら千香にいうと、千香はため息をついていた。
「ほんと、自分中心で生きてるわ」
「でも、千紗ちゃんの言葉、すっごいささったなー」

好きな人とは一緒にいたいし、笑い合いたいし、そばにいたい。
それは、間違いなくシンプルな気持ちで。

あたしも藤崎と一緒にバカな話して、笑いあって、そばにいたいよ。
叶うならこの先も、ずっと。

「あたしも、考えてみる。色々」
「役に立つことあるんだ、千紗も」
「そんなこといわれてかわいそう」
「いつもうるさいだけだからね」
「千香の妹に思えないくらい元気で明るいよね」

あくまでクールな千香と違って面白い。
そして顔も似てるから明るい千香にみえてそれもまた面白い。

「ポジティブ変換するとそうだけどね」
「千紗ちゃん、あたし好きだよ。可愛いし、元気だし」
「たまに会うくらいならね」

妹もいないあたしからすると、あんな妹いたら可愛いだろうなーと思うけどね。

「あんたそろそろ帰らなくていいの?」
「あ、うん。帰る」
千香にいわれてあたしは立ち上がった。

結構長居しちゃった。

帰る準備をしてあたしは千香の部屋を出た。
玄関まで見送ってもらうと、玄関に花が飾ってあるのが目に止まる。

「あ、これ、こないだ買ったやつ?」
「ああ、そうそう」
「お母さん喜んでくれた?」
「たぶんね」

花瓶にもミニブーケのときのように綺麗におさまってて、かわいい。

「あたしも今度お母さんの誕生日のとき買ってみようかな」

家で花が飾ってあるのを見たことはないけど、たぶん嫌いではないはずだ。

「いいんじゃない?」
「うん、またみてみる。それじゃ帰るね」
あたしはドアに手をかけて千香を振り返ると、千香も手をあげて「気をつけてね」と返してくれる。
「うん。ありがと。バイバイ」
そういってあたしは千香の家から出た。
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